農場の問題改善とトレーニング(乳量 飼養管理 作業効率の改善)その1

酪農コンサル氏と組合の協力を得て農場改善とそのトレーニングを2012年4月28日に行いました。

目的

福岡県西地区の農場で乳房炎、暑熱対策、分娩前後の疾病など農場における問題改善の手順と方法を実際の現場で学び、乳量のアップ、飼養管理、作業効率の改善を提案することで、お客様との信頼関係をより一層深めること。

牛舎、搾乳前の牛群、飼料、搾乳、飼養管理の確認

牛舎および外回り

牛舎および外回り

水槽

水槽

搾乳前の牛群

搾乳前の牛群

飼料原料

飼料原料

搾乳

搾乳

待機場

待機場

牛群、飼料、搾乳、飼養管理確認の結果、以下のような問題点を指摘されました。

  • 搾乳前にスタンチョンがロックされているためか立っている牛が多い。
  • ビール粕がカビ臭い。
  • アブレストパーラーの待機場のファンの数が足りておらず、牛によっては40分以上も立っていたため、夏場の暑熱ストレスが大きいと考えられる。
  • バキュームポンプのスイッチを入れてすぐに搾乳を始めているため、真空圧が安定しにくいのではないかと思われる。
  • 搾乳し終わった牛がエサを食べに行かない。スタンチョンがロックされていることを牛が覚えてしまっている。
  • 乳頭の拭き取りが充分でなく、乳頭口に糞が付着している。それが搾乳後にはきれいになっており、バルク乳に混入しただけでなくドロップレッツにより乳房内に入り込んだ可能性もある。

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  • ポストディッピングが乱暴で全体にかかっていない。
  • 経産牛群の後に初産牛群が搾乳されており、乳房炎感染率の高い経産牛から初産牛への乳房炎感染の可能性がある。
  • 採食時にスタンチョンが肩に当たってコブができている。

採食時にスタンチョンが肩に当たってコブができている。

採食時にスタンチョンが肩に当たってコブができている。

  • 発情発見システムの歩数データによると、発情でもないのに歩数が増えている牛が多い。搾乳時に除糞をしていないため、牛を無駄に立たせ休息の時間を奪っている可能性がある。

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  • 搾乳後に種付けをしているため、スタンチョンをロックしている時間が約2時間と長く、牛は食べることもなく、反芻もせずにボーッとしている。(エサを食べ、水を飲み、反芻し、休む時間を増やしてやることが乳量のアップにつながる)

農場の問題改善とトレーニング

改善の提案

搾乳

  • 乳頭の拭き取りをペーパータオルから布タオルに変更する。ペーパータオルは乾いていて衛生的だが痛がる牛もおり、殺菌した布タオルの方が柔らかく、面積も広いため汚れが落ちやすい。
  • ポストディッピングの徹底。
  • 初産牛群から先に搾乳をする。

飼養管理

  • 搾乳後のスタンチョンをロックする時間を短くする。種付けの牛だけロープで固定する。除糞を搾乳中に行うことでも拘束時間を短くすることができる。
  • 肩に当りが出ないようにエサ押しのタイミングを考える。

暑熱対策

  • 待機場のファンの数を現在の4台から9台に増やす。暑熱対策は乾乳牛、待機場を優先した方が効果的である。
  • ガルバーの屋根材に石灰を塗布する。石灰1に対して水2の割合。これにより牛舎の最高気温が3℃程度下がる。
  • 西日対策を早急にやる。(現在寒冷紗を設置準備中)
  • 暑熱対策としてソーラーパネルの導入を検討する。初期投資は大きいが再生エネルギー促進法が施行されると暑熱対策だけでなく投資効果も高い。

まとめ

農場での問題改善には『観察』の占める割合が大きいことは頭で理解しているつもりですが、実際にそれをどのような手順で進めるのかを現場を学ぶことが今回の目的のひとつでした。

実際に肩にコブができていることや待機場の暑熱対策などの問題に気付いていないことも多く、しっかり牛を『観察』することがいかに大切かを感じました。

乳房炎の問題も解決するにはバルク乳の成分や牛群検定のレポートだけでなく、早起きをして実際に搾乳に立ち会い、細かい作業まで何が問題なのかを『観察』する必要があると再確認しました。

またコンサル氏の仕事のやり方は牛をしっかり『観察』するだけでなく、お客様に問題を充分に理解してもらうため写真や動画を使い、分かりやすい言葉で話しています。小さな改善の積み重ねから信頼を得ることに力を入れ、全体の改善に結びつける意思を感じます。

牛は諦めが早い動物だと言われますが、水を飲みたい時に飲み、エサを食べたい時に食べられるように、牛がどうしたら楽になるかをもっと考えることで飼料設計だけに頼らずにお客様との信頼関係をより深いものにするよう取り組んでいきたいと思います。

2012年5月7日

『農場の問題改善とトレーニング その2』へ続きます。>>

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