今回ニュージーランド北島と南島を訪問しましたが、酪農が主に行われているのは南島のクライストチャーチから南へ1時間ほど下ったカンタベリー地区です。
ニュージーランドには500万頭の経産牛がおり、その20%に当たる100万頭がここカンタベリー地区に集中しています。
ピーターが毎年営業で訪れているアッシュバートンに事務所を置くdbc(デイリービジネスセンター)社を訪問し、周辺の牧場を案内してもらいました。
放牧のウッドベリー・ファーム
はじめに訪問したのは放牧を行っているウッドベリー・ファームです。
搾乳頭数320頭、放牧とTMRを併用しています。
毎朝3時になると放牧場のゲートが開き、牛がTMRを食べに屋根のない給餌場に集まってきます。
TMR給与は、放牧草に足りないものを満たす目的もありますが、この牧場のオーナーは青汁の原料になる乾燥ケールや大麦若葉などを日本へ輸出する商売をメインとしており、廃棄する野菜のくずを牛に食べさせるために与えています。オーナーは、酪農部門は利益がなくてもよいと考えています。
朝の搾乳は5時からで、搾乳者は一人、その他の仕事をするもう一人との二人体制ですべての仕事をこなします。午後の搾乳は3時から始まります。
開放的な22頭のスイングパーラー
ニュージーランドの「未来の酪農」パネッツ・デイリー
続いて「ニュージーランドの未来の酪農を見せる」といって連れて行ってもらったのがパネッツ・デイリーです。
この牧場は昨年オープンし、酪農家3名と牛舎を建てた建築会社、それに投資家2名の合計6名が投資して完成しました。
アメリカで見る現代風の酪農と瓜二つで、フリーストール牛舎の糞尿はスクレーパーで集められ、固液分離されます。
搾乳頭数600頭との説明ですが、牛は半分ほどしかいませんでした。人手不足なうえ、フリーストールの管理を教える人もいないようで、経営に苦戦しているようでした。
飼料原料を貯蔵する倉庫もアメリカで見られるものと同じオープンタイプです。
搾乳は60ポイントのGEA社のロータリーで、たったひとりで搾乳するそうです。
次に訪問した牧場でも従業員が一人で搾乳しており、乳房を拭いたり、プレやポストデイッピングしたりの前準備は一切せず、いきなりユニットを装着していました。
ニュージーランドのヤギ牧場と羊牧場
北島のオークランドでは酪農は盛んではなく、牛を見ることはほとんどありませんでした。
訪問したのはロータリーパーラーのあるヤギ牧場と昨年完成した羊牧場です。
フリーバーンと22ダブルのデラバル製パーラーです。
TMRを食べさせています。
どちらの牧場も専門のメーカーで加工し、製品は東南アジアへ輸出しています。
作物の近赤外線分析システム
dbc(デイリービジネスセンター)社の特徴のひとつは、草やコーンの分析を事務所で即座にできるシステムがあることです。写真はドイツ製の近赤外線分析器(500万円ほど)で、30秒で分析値がコンピューターに表示されます。
近赤外線分析(NIR)はサンプル数が多くないと正確な分析値はでませんが、分析件数が多くなればそれなりの数字は得られます。
ニュージーランドの乳価
乳質についてdbcの技術者に質問すると、脂肪4.2、たんぱく質3.8、乳糖4.85、体細胞数216,000だと答えてくれました。
ニュージーランドの乳価は固形分あたりの重量で計算されその値は6.20ドルですが、これを換算すると乳価はキロ67円ほどになるので、収入はだいぶ少ないようです。
ニュージーランドの人口は日本の4%に過ぎませんが、4倍近い乳牛がいるので、乳価は国際競争にさらされています。最大の輸出先は中国です。
ニュージーランド酪農の現況とこれから
ニュージーランドの酪農は、放牧からフリーストールへの過渡期にあります。
放牧だけでは乳量が少なく乳代収入は少ないため、放牧プラスTMRの形態がみられるようになりました。 この形態をPMR(Partial Mixed Ration、部分的)と呼び、またふたつの方式を合わせたのでハイブリッドとも呼びます。
以上のような状況から、ニュージーランドの酪農は専業が少ないようです。