乾乳期の管理
1.乳牛はいつベストコンディションにもっていけばよいか
乳牛は1年のうちで分娩日にベストコンディションになるよう調整します。
女性はお産が近づくにつれ肌はつやつやし、美しさを増します。乳牛も分娩日にビューティフルに輝き、大きく目覚め、準備万端の状態で分娩を迎えるのがベストです。そのような状態で泌乳期をスタートさせられれば、高い乳量が期待できます。
ベストなコンディションを“12時”の状態と言い、ベストより手前の状態は11時、ベストを過ぎた状態は1時と表現します。
2.ノーコファームズ12時の乾乳牛(ベストコンディション)
骨量のある牛(イングリッシュボーン)のベストコンディション
『余分にあってよい』
骨量の少ない牛(ヨーロピアンボーン)のベストコンディション
控えめがよい
3.コンディションはどこまでつければよいか
乾乳牛は十分にコンディションをつけていなければいけません。
乾乳牛の状態をボディコンディション・スコアで表わす考えがありますが、私は数字で牛を判断することはしません。その理由は、ボディコンディション・スコアは個々の牛の骨格や骨量を考慮していないからです。骨の細い日本人のベストコンディションは、骨量のあるアメリカ人のベストコンディションとは違います。
- コンディション(脂肪)は後躯から上に向かってつきはじめます。
- 次に坐骨(ピン)から腰角突起(フック)にかけての平らな寛骨(かんこつ、ヒップボーン)の上につきます。上から触れると1センチほどのクッションを確認できます。
- 次に中躯である背中の部分に脂肪がつく。
- 前躯にまわって滑らかな肩骨(ショルダーボーン)の上から胸前(ブリスケット)へと下に向かって脂肪がのります。
- 胸前部分をおおった脂肪は、次に体の内側に入り、心臓、腎臓、肝臓につきます。
- 脂肪が内臓にまで入ってしまうと問題であり、ブリスケット部分に脂肪がのった時点でストップさせなくてはいけません。
- 内臓にまでついた脂肪は、今度は今までと逆の方向に向かってつきます。こうしてついた二重の脂肪は代謝されることなく、エネルギーとして利用されません。
胸前(ブリスケット)部分まで脂肪がのったときがベストコンディションです。
4.その他に乾乳期で実行すること
- 運動が必要
- 乾乳牛舎は飼料と水槽を反対側に置き、床は片側を90センチ高くして、乾乳牛を運動させる。
- 乾乳用のTMRのほかに1日1頭あたり5ポンド(2.27kg)の乾草を午後5時半に与える
- 夕方の給与は日中のお産を促す。
- ビタミンEを高濃度与える。
- 削蹄を乾乳後30日以内にする。
- 念のため妊娠確認を行う。
- 粗飼料の割合が多い飼料を与えて新しいルーメンマットを形成する。
- 全乾乳期間にイオンバランスを整えるミネラルを与える。
- 全乾乳期間を通してイーストカルチュアーを与える。
- ルーメン内に新しい世代の微生物を増やす。
シリーズ『世界一の酪農経営』
【世界一の酪農経営】ノーコファームズ フィル・ヘルフターさんの経営哲学https://www.nastokyo.co.jp/reports/management_top/